■雷蔵の「春の雪」
夭折された市川雷蔵さんは病床で三島由紀夫の「春の雪」をやりたがっていたのだそうです。三島がこの作品を書き上げたのが1966年。残念ながら雷蔵さんはこの時、30代半ばで、10代の主人公清顕を演じるにはかなり無理があったと思われます。「春の雪」が1950年代に存在した作品であったのなら、どこか陰のある雷蔵さんにぴったりはまったことでしょう。そして相手役の聡子を演じるのはやはり若き日の若尾文子さん以外にはありえません。三島とはなにかと縁のあったおふたりですから。2005年にようやく映画化された「春の雪」に若尾さんが門跡役で出演されたのもこのような因縁からだったのでしょうね。
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