■TEXT

 Jun 1,2018

■MIFUNE: THE LAST SAMURAI

 現在のところ、横浜市内ではシネマリンというミニシアターでしか上映されていない「MIFUNE: THE LAST SAMURAI」を観てきました(ちなみに同じエリアにあるミニシアター『横浜ニューテアトル』は本日で閉館だそう)。

日系三世のスティーヴン・オカザキ監督による三船敏郎さんのドキュメンタリー。三船さんの共演者やスタッフのインタビューを軸に構成されています。なるほどと思ったのは、三船さんが俳優になった時代は戦後の誰もが職に飢えていた時でやむを得ず俳優という職業を選んだという点と、黒澤明監督の今なら考えられないような危険な撮影(三船さんに向かって本物の矢を放つなど)を承諾したのは三船さんに軍隊経験があり上官の命令には絶対服従だと刷り込まれていたからではという点。このあたりの選択の余地のなさ加減は時代が色濃く反映していたのでしょう。

映画関係者を取り上げたこのような映画で私が思い出すのは「ある映画監督の生涯 溝口健二の記録」(1975年)ですが、この映画にも今回の映画にも香川京子さんが出演されていて、改めて香川さんは日本映画の黄金期を知るレジェンド的存在だと思いました。また、今回の映画は2016年に完成していた作品のようですが、インタビューで登場する土屋嘉男さん、加藤武さん、夏木陽介さんはすでに鬼籍に入られ、これらの方々の近年を記録した映像としても貴重だと思います。

日本映画を体系的に観ようとすると、三船さんの映画は避けては通れないものですが、何かのワンシーンが出てくるとすぐにタイトルが思い浮かぶほど三船さんの映画を観ている自分にも驚きました。個人的に好きな三船さん出演映画は黒澤監督では「羅生門」(1950年)、「七人の侍」(1954年)、「隠し砦の三悪人」(1958年・乗馬のシーンが鳥肌)、黒澤監督以外だと稲垣浩監督の「無法松の一生」(1958年)です。「無法松の一生」はカラー作品でしたが、黒澤監督の3作品はどれも白黒。三船さんは白黒フィルムの方がぴたりとはまる気がします。


 

■■■■■■■■ kishi masayuki on the web


<<   TEXT MENU   >>

HOME