■TEXT

 Dec 26,2018

■洋物礼賛バイアス

 1950年代の日本映画は宝の山です。なにより作り手が世界で成功してやろうとかいう野心ではなく、ただただ面白いものを懸命に作るという潔さに徹している感じがするのです。

戦後の影がまだ色濃く残るこの時代、経済は貧しかったかもしれないけれど、映画製作者の感性の豊潤、意識のなんと高かったことか。この系譜が1970年代初頭ですべてリセットされてしまったのは、映画界が斜陽になり、日本の経済重視思考が映画産業に目を向けなくなったことによるものですが、あれだけのものを積み上げながら後継が出なかったことは本当に残念です。いや、おそらく黒澤級の才能のある人物はいたのでしょうが、食えなくなった映画という世界に入らなかったというのが正しいのかもしれません。

思えば私自身も1970年代や1980年代に映画館で日本映画を観たという記憶はあまりありません。ロードショーといえば、まずハリウッドものでスターウォーズとかジョーズとか世間で話題になったものを流行りのレストランに行くように観ていた気がします。まあ我々の世代はアメリカ・イギリス礼賛を刷り込まれているので、音楽でも映画でも服でも楽器でも食べ物でも洋物のほうがかっこいいということになっていたのです。今にして思えばこれは無知以外のなにものでもないわけですが、それでも自分の中では日本的なものってそんなにだめだったの?とどこかに看過できない感情もあり、それを埋めるもののひとつとしてようやく1950年代の日本映画に出会ったというわけです。

 

■■■■■■■■ kishi masayuki on the web


<<   TEXT MENU   >>

HOME