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 Feb 19,2019

■RURIKO

 「RURIKO」(林真理子著 2008年)を読了。

登場人物はほとんど実名です。部分的に脚色はあると思いますが、私はほぼ浅丘ルリ子さんのバイオグラフィーとして読みました。バイオグラフィーはご本人が書くとどうしても変なバイアスがかかるので、書ける第三者が書いた方が圧倒的にリアリティがあるというのが持論です。

リアルタイムでは知らない黄金期の日活映画はたくさん観ました。女優では北原三枝さんの印象があまりに強く、正直言ってプログラムムービーでの浅丘さんの印象はあまりありません。強い印象とともに覚えているのは、ロードムービー仕立ての「憎いあンちくしょう」(1962年)。ジャガーを運転して石原裕次郎さんを追いかける強い女性を演じた浅丘さんはそれまでの日活映画に出てくる待ち続ける女性のイメージを打破し、大変印象的でした。ところが、浅丘さんがようやく自分の立ち位置を見つけかけたこの1960年代には映画業界の斜陽化は看過できないところまで進んでいました。

物語の多くのパートには石原裕次郎、美空ひばりという戦後のスターのアイコンが登場し、彼らがスターという天賦を与えられた代償として差し出さなければならなかったたくさんのものが描かれます。浅丘さん自身も映画からテレビへの転身や、破局など様々な変化を余儀なくされますが、浅丘さんの場合、なぜかここに悲壮感のようなものがないのは、時代に抗わないある種の達観があるからだと思います。

また、1970年代のテレビドラマ「2丁目3番地」が倉本聰、石坂浩二、浅丘ルリ子のトリオで、それが現在放送中の「やすらぎの郷」につながるのというのも初めて気づきました。


 

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