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 Mar 10,2019

■1960年代のTOMITA

 子供の時にテレビで「ウルトラマン」が始まり、夢中になったのですが、その次のウルトラシリーズ「キャプテンウルトラ」にはなぜか違和感を感じ、はまらなかったのです。

今になってその理由がようやく分かったのですが、「ウルトラマン」は東宝系の円谷プロの制作であったのに対し、「キャプテンウルトラ」は同じウルトラシリーズということになっていますが、実は東映が制作したものでした。いきなり作品のテイストがガラリと変わり、馴染めなかったのはそのような制作側の変化によるものでした。

このように私にとってはあまり記憶に残らなかった「キャプテンウルトラ」でしたが、今観るとひとつだけ白眉なのはその音楽です。このオープニングのテーマソングは一回聴いただけで、ものが違うと感じ、子供向けの音楽でこんなにぶっとんだ曲を作るのは誰なのだろうと調べると、なんと冨田勲さんでした。

どこがぶっとんでるかは、オープニングというタイムに制約があり、子供向けというテーマにもかかわらず、途中で変拍子を入れるわ、メロの最後の音に7度というすごく微妙な音を使うわ、仕掛け方が並みではないのです。同時期の富田さんの仕事では「ジャングル大帝」がありますが、こちらの正統派の作りに対して、「キャプテンウルトラ」の攻め具合はプログレと言っても過言ではないぐらいの落差があります。もうひとつ、この時代の音楽はフルオケが基本ですから、サウンドの凝り方も尋常ではありません。20段ぐらいの譜面にびっしり書き込んである感じで、マルチトラックがせいぜい4トラックということを考慮すれば、イントロの発信機のような効果音も音程、タイミングを譜面に表記してあるかもしれません。このようなこだわりを考慮すれば、冨田さんという人は本来、学者とか研究者になるべき人がどうしてもやりたくて音楽家になったという感がします。そして、前のウルトラシリーズである「ウルトラマン」のテーマソングであり、誰でも知っている「むねーに、つけてるー」という分かりやすく、子供が歌いやすい曲とは全く別次元です。

また、この時代の商業音楽を手掛けた作曲家は、多かれ少なかれジャズの影響を受けているものですが、冨田さんの場合はそれが感じられず、ひたすらクラシックがベーシックにあるような気がします。

私自身も覚えがありますが、作家の本来の個性というのは案外、埋もれてしまった仕事の方に色濃く現れているのかもしれません。


 

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