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 Oct 10,2019

■草刈さんの若大将

 1970年代に草刈正雄さん主演の若大将映画がありました。加山雄三さん主演のドル箱シリーズを新たに草刈さんでリメイクしたというわけです。

草刈さんの若大将シリーズは全部で2作作られたのですが、その1作目「がんばれ!若大将」を先日、観ました。リアルタイムで観て以来、数十年ぶりに観た映画です。加山さんのシリーズの時には子供だったので、それほど感じなかった大学への憧れでしたが、このシリーズではこちらの年齢も大学生に近くなっていたので大学とはかくも自由なところなのかとよりリアリティを持って観たのでした。

トイレのマンホールで焼肉を焼くというギャグ(加山さんのシリーズにもあった)はよく覚えていましたが、草刈さんの父親役がフランキー堺さんで、寮のおばさんが賀原夏子さんであったことは全く失念していました。青大将が湯原昌幸さんでマドンナがいけだももこさんだったことはよく覚えていましたが、このいけだももこさんがあまり女優女優していなくて、当時から印象的でした。草刈さんの歌う主題歌(林哲司さん作のトム・ベル風フィリーソウルなバラード)が流れるシーンは、草刈さんといけださんが軽井沢でデートするイメージビデオのようになりますが、これが心に残るのですよ。若いころなら、ふふふで終わるシーンが、歳をとってから観ると別の感慨が生まれるというわけです。その感慨とは若さだけが持つ無垢さや無防備さがまぶしいといったようなものでしょうか。このあたりはまだあまり役者っぽくないこのふたりだから出せた雰囲気かと。

賀原さんが「こういう時に先代の若大将ならすぐにかけつけるのにね」などというセリフや、最後に箱根から青大将運転の車で競技場に駆け付けるという展開は、昔の若大将シリーズのオマージュですが、結末が分かっていながらも観てしまうというこの若大将シリーズは忠臣蔵的な作品なのかもしれません。


 

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