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 Dec 2,2019

■恋の追跡

 近年、ちょっとブラスの積み上げ方に興味があり、チェイスの「黒い炎」(Get It On)を採譜していたら、ふと思い出した曲が。

1972年の欧陽菲菲さんのヒット曲「恋の追跡」(ラブ・チェイス)。この曲のアレンジが「黒い炎」をたたき台にしていたことは良く知られています。それにしても、前年にヒットした曲のテイストをすぐに取り入れてヒット曲に仕立てるという早業は、当時の日本の音楽業界がいかに活況だったかを感じさせます。そして、この時代は歌謡界にもソウル/R&B寄りのパンチのある女性シンガーが何人かおりました。欧陽菲菲さんをはじめ、和田アキ子さんや朱里エイコさんのように。欧陽菲菲さんの名曲「恋の十字路」なんてスモーキー・ロビンソンみたいで、筒美京平さんのモータウン指向が炸裂しています。

「黒い炎」はトランペット×4で、「恋の追跡」もトランペット中心(+トロンボーン)の構成のように聴こえます。ただし「黒い炎」の歌メロがブルーノートの目立つR&B的なのに対し、「恋の追跡」はマイナーのロックテイストで、このあたりがこの時代の洋楽を翻訳して歌謡曲に仕立て上げるという方向性のひとつであったと思われます。同時期のニューミュージックの出現が歌謡界に与えた影響のひとつはこのGS時代からほぼ不変だった翻訳ルールを変化させ、かなり洋楽寄りになっても許されるという事ではなかったかと思うのです。


 

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