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 Jul 17,2020

■太陽と果実

 1956年に封切られた石原慎太郎さん原作の映画「太陽の季節」と「狂った果実」(以下、「太陽」と「果実」)。この2作品は姉妹作と言ってもいいのですが、いつも混同してしまいます。

長門裕之さんと南田洋子さんが「太陽」で、石原裕次郎さんと津川雅彦さんと北原三枝さんが「果実」です(「太陽」の長門さんが高校生というのはかなり無理な設定だと思いますが)。ちなみに裕次郎さんの映画初出演は「太陽」で、主役の長門さんの学友のひとりという役。冒頭のクレジットに新人の文字があります。

海や逗子などが舞台、男2人兄弟、セレブな学生の集団、喧嘩やヨットやダンスパーティ、横浜に実在したナイトクラブ「ブルースカイ」が登場する点、原作の慎太郎さんが出演している点など設定が似ていることが混同する理由ですが、主役のふたりが実生活でも結婚するという点も同じです(「果実」で夜の遊園地で裕次郎さんたちにからむ学生が長門さんと慎太郎さんで役名がそれぞれ石原と長門というのも洒落ています)。ただし「果実」の方でも、オープニングのクレジット場面はずっと津川さんのアップで、どちらかといえば日活はこの時点で裕次郎さんより津川さんの方に重きを置いていた感じです。ちなみにこの時、津川さんはまだ16歳。この歳で濃厚なラブシーンは今なら問題になっているかもしれません。

今の感覚で観ると、この映画の最先端だった風俗など理解に苦しむ点もありますが、早口で独特のセリフの言い回しは当時の映画の中でも異質だったことは分かるような気がします。私の世代では1970年代にそれまでの型にはまったドラマや映画の中に独特のスタイルで登場してきたショーケンの異質さは強く印象に残りましたが、裕次郎さんがほとんど素のままでスクリーンに登場した時もこの感覚と同類のものであったと想像します。それまで主役と言えば長谷川一夫や上原謙のような定型の美形で私生活が見えないというのが定石でしたが、裕次郎さんの登場でそのルールが根本から変わったような気もするのです。つまり、リアルな生活スタイルが見えるスターが登場したということだったのでしょう。

それにしても、裕次郎さんの映画出演1作目からの腹の座った感じは一体なんなのでしょう。裕次郎さんは原作者の弟ということから、日活でも特別扱いで、大部屋の経験や演技の講習などはほとんど受けていないとなにかで読みましたが、共演している俳優たちがひっぱられるほどこなれていて自然に見えます。一方、特別出演している慎太郎さんはどうも見ているほうがはらはらしてしまうほど素人くさいです。素人が素人くさく見える理由は中途半端な演技をしている点ではないかと思うのですが、兄弟とはいえこの2人の天性の方向は全く異なっていたのだと思います。

追記) と書いていたら、石原プロモーションが来年1月に解散という発表がありました。1980年代の後半、いまはなき横浜のバンドホテルの駐車場で石原プロのロケ車両を頻繁に目撃しました。舘ひろしさんの出演していた「あぶない刑事」の撮影のために来ていたのだと思いますが、あれがもう30年以上前のこと。さらにその30年前、日活時代の裕次郎さんの映画もよく横浜が舞台になっていましたが、その時代はまだ山下町のランドマーク、マリンタワーがないので驚くのです。ちなみに私は裕次郎さん主演の映画で一番好きなのは「憎いあンちくしょう」(1962年)です。ロードムービー仕立てのプロットは新鮮でスピード感があり、何度観ても面白いです。

 
 

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