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 Oct 22,2020

■キャンパスもの

 1970年代末期から1980年代にかけて、音楽でキャンパスものというジャンルがありました。これは大学生活を舞台に様々な物語が展開するもので、私の知る限り、そのコンセプトを明確に打ち出してアルバムを作ったのは竹内まりやさんのアルバム「ユニヴァーシティ・ストリート」(1979年)が最初ではなかったかと思います。

それ以前にも「学生街の喫茶店」(1972年)や「いちご白書をもう一度」(1975年)などの大学ものはありましたが、それらは学生運動の挫折をひきずった暗いイメージを持っていました。この時代になるとテーマはもっとライトで、ユートピアのような場所で展開する恋愛ものが中心になります。

「ユニヴァーシティ・ストリート」に入っている「涙のワンサイデッド・ラブ」は、10月の雨の日にバス停で傘を差しだしてくれた彼に恋をする話。ところが、ある日、この彼が彼女と仲良く歩いているところを見てしまってあっけなく恋が終わるという展開です。付き合ってもいないうちに恋が終わるというなんともプラトニックな別れです。

もう一曲、まりやさん関連では「サマー・ヴァケーション」(1984年)という曲があります。これは作曲の村田和人さんとのデュエット曲で、キャンパス・リゾートものです。夏休みに軽井沢のような避暑地で知り合って付き合うという話です。彼の押しが弱かったために、秋に別れてしまうという展開。作詞は安藤芳彦さん。村田さんのヴォーカルも素晴らしい。

そして、私も書いたことのある児島未散さんのキャンパスものは「セプテンバー物語」(1985年)。この曲、久々に聴いてみると、児島さんのイノセントなヴォーカルがなんとも良いです。これもキャンパス・リゾートものですが、舞台は湘南のような海です。指輪をもらうほどの仲だったのに、「別に愛と言い切れるほど深い付き合いしたわけじゃない」という一節は主人公の強がりでしょうか。夏休みが終わり、恋も終わり、9月にはレンガ色のキャンパスに帰っていくという展開。PVには青学が出てきます。作曲は林哲司さん、作詞は松本隆さん。


 

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