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 Nov 30,2020

■東京ビートルズ考

 その昔、「プロ・マーティン」というギターのブランドがありました。もちろん、あの有名な米マーティン社とは無関係ですが、「マーティン」という言葉が付いただけで、なにかそのギターの価値が上がったような感じがしたものでした。それは無数に存在する「○○銀座」という商店街と同じような感覚だったと思います。

そこで東京ビートルズです。このバンド名でメージャーのレコード会社が複数のレコードをリリースしたという事実にも驚かされますが、当時はジャケットが正真正銘のビートルズであるにもかかわらず、中身は他のバンドの演奏したビートルズの曲だったなどという商品がまかり通っていた時代だったといいます(杉真理さんはこのようなレコードをビートルズだと思って買ったことがあるらしいです)。

1964年にデビューした東京ビートルズは当時のビートルズ人気にあやかって結成された日本のバンドでした。ビートルズの曲を日本語詞にしたカバーがメインでしたが、最近の調査ではキンクス、ローリング・ストーンズ、デイヴ・クラーク・ファイヴ、ピーター&ゴードン、アニマルズ、ハーマンズ・ハーミッツ、ハニカムズなどの曲もカバーし、ソノシートでリリースしていたことが判明しています。1990年代にカルトなバンドとして知名度が広がったのは大瀧詠一さんが注目したのがきっかけと言われています。

さて、ここからはwikiにも書かれていないあまり知られていないこと。実は本物のビートルズの番組で東京ビートルズの音源が流されているのです。その番組とは1965年12月に放送された英グラナダテレビ製作の特別番組「ザ・ミュージック・オブ・レノン・アンド・マッカートニー」。この番組はレノン・マッカートニーの曲に焦点を当て、実際にビートルズが出演し、ジョンとポールが他のミュージシャンのカバーした様々な国のレノン・マッカートニー作品について感想を言うという内容です。

その中でノークレジットながら東京ビートルズの「キャント・バイ・ミー・ラブ」が日本語の歌詞を表記した画面とともに4小節ほど流れます。歌詞の表記はやや間違っていますが、これを聴いてジョンとポールがコメントするのです。この番組は日本では放映されなかったようなので、おそらく東京ビートルズのメンバーも当時は知らなかったのではないでしょうか。いずれにせよ、音源は本物のビートルズの耳に届いていたのです。

 

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