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 Jan 6,2021

■映画とスポンサー

 昔の日本映画を観ていると、唐突に実在の商品名がセリフに入っていたり、背景などに目立つように実在の商品の広告があったり、ラジオやテレビがアップになるシーンでメーカー名が大きく表示してあるケースもあります。

黒澤明作品も例外ではなく、例えば「酔いどれ天使」(1948年)では電車高架下の壁にあるわかもと製薬の実際の商品「ワカフラビン」の看板がかなり印象的で、これ、今流に言えばステマ、つまりタイアップの一種だと見て間違いないでしょう。

小津安二郎作品にもこのようなケースはあり、特に目立つのは酒席のシーンでの飲み物の瓶です。ビールなどはわざとカメラ側にラベルが映るように撮っており、これもタイアップと見て間違いないと思います。特にカラーになってからのその効果は絶大で、ラベルの赤が映えます。

例えば「彼岸花」(1958年)はアサヒビール(新旧2種類のラベルとABと書いてある箱も登場します)とバヤリース、「お早よう」(1959年)もアサヒビール、「秋日和」(1960年)ではサッポロビール、ジョニー・ウォーカーの赤ラベル、バヤリース、カナダドライも目に付きます。「秋刀魚の味」(1962年)ではサッポロビール、サントリー・オールドやホワイト、トリス・ウイスキー。バヤリースの黄色い灰皿もよく出てくるアイテムです。

驚くのは私が今でもバヤリース・オレンジを売っているとなんとなく買ってしまうことです。これなどは大昔に仕込んだ宣伝が今でも生きているということで、バヤリースとしては大成功だったタイアップというわけです。「ワカフラビン」はさすがにもう売ってませんが(笑)。

 

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