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■Back To The Street

 
 
「Back To The Street」は言うまでもなく佐野元春さんのデビュー・アルバムですが、かなり良く聴いたアルバムでした。私は音楽を聴く時にすぐに分析モードに入ってしまう悪い癖があるのですが、このアルバムは今でもそうならないのです。つまり頭より先に心が反応してしまう数少ないアルバムなのですな。

このアルバムが出た直後に横浜の県民ホールでライブがあるとの告知が出たのですが、なぜかそれは中止に
なり、学生だった私が初めて佐野さんのライブを見たのは元町にあった「舶来屋」というアメリカン・スタイルのサ
ンドイッチなどを出す店だったのです(追記:当時の手帳で確認したところ、1980年7月だったようです)。もちろん普段はライブなどをやる場所ではないので、ステージもなく、店の奥に無理やり楽器をセッティングして行われたライブでした。その店に隣接して産婦人科があって、佐野さんは「その病院からクレームがくるので、今日はロックンロールはできないんだ」とMCで言われたことをよく覚えています。観客は50人ほどだったでしょうか。

<<1990年頃の「舶来屋」のエントランス。
トレイを持って好きなサンドイッチをオーダーする
セルフ・サービスの店でした。

       当時の「舶来屋」のマッチです。>>


それから1年後ぐらいに私は音楽の仕事を始め、あるCMの仕事で佐野さんと同じスタジオで録音するという機
会がありました。当時はCM用プレゼンテーションのデモ・テープを作るために、各アーティストが同じスタジオで
順番に録音するというケースがあったのです。そこで、私は佐野さんの歌入れの現場に立ち会うという幸運な
経験をしました。おそらく事務所の事情で引き受けたと思われるCMの仕事だというのに、ステップを踏みながら歌入れをしていた佐野さんの印象は強烈なものでした。私はこの時の佐野さんの曲を今でも覚えています。「〇〇〇、〇〇〇〇〇〇(商品名)、どんな恋をしてきたの」という歌詞でした。ちなみに採用になったのは私のでも、佐野さんの作品でもなかったのですが・・・。

佐野さんがその後、大ブレークして同じ横浜でもスタジアムでコンサートをするようになるのは1987年のことで
した。

写真左が佐野元春「Back To The Street」(1980年)、写真右が1990年に私が撮影した同じ場所。
横浜の県民ホールの裏にあったこの「Indian Merchant Association Of Yokohama」も今はありません。

                                                          2002/6/16

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