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 Mar 5,2021

■ルシイルアンダソンの謎

 1954年の東宝映画「ゴジラ」を米国で買い付けた会社は作品を再編集して、不要な部分をカットしたり、新たに撮影された部分を挿入して改定版を製作し「Godzilla, King of the Monsters!」(1956年)というタイトルで公開しました。

物語はマーティンという海外特派員が日本へ出張した時に、ゴジラが出現し、怪我をするところからそれまでの経緯を回想するというもの。当然ながらマーティンと日本人の登場人物とのシーンが必要になってきますが、それは現地のアジア系俳優や替え玉の俳優を後ろ姿で起用することによって凌いでいます。

ゴジラには様々な寓意があることは言うまでもありませんが、それはこの改定によってかなり薄められています。付け加えられた部分はオリジナルの重厚で明暗のはっきりした映像に比べるといかにもスタジオで短時間に撮りましたという雑なものですが、これも単なる娯楽作品やスピンオフとして観るなら楽しめると思います。

ただし、日本人が観ると突っ込みどころ満載なのは確か。現地のアジア人俳優の日本語はたどたどしいし、現地セットの漢字は非漢字圏の人が書いた典型的な漢字です。極めつけは登場人物の着ている法被に謎の「ルシイルアンダソン」と書かれたカタカナが書かれていること(写真左)。このルシイルアンダソンが気になって、ちょっと調べるとこの法被は別のアメリカ映画にも登場していて、それは「First Yank in Tokyo」(1945年)という映画(写真右)。映画用の衣装レンタル会社かなにかにこの法被があったのか、それとも他の理由があったのか、謎は深まるのです。そもそもルシイルアンダソンとは一体誰なのでしょう?



おまけにもうひとつ突っ込みどころを。オリジナルのエミコの服やスカーフと替え玉との違い。

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