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 Apr 20,2021

■幻の映画「大津波」

 世の中には、一度公開されたにもかかわらず、諸般の理由で封印された映画が少なからず存在します。例えば、東宝の特撮映画の中には、現在の基準ではその差別的な表現が問題となり、ソフト化されておらず、なかったことにされている作品が複数あります。

ところが「大津波」(1961年)の場合は少々事情が異なるようです。「大津波」はバール・バックの原作・脚本の日米の合作映画です(日本側の製作は東宝)。監督はタッド・ダニエルスキー(この監督は生涯に数本の映画しか残しておらず、どういう人物なのか謎)、日本が舞台のストーリーで、出演者は早川雪舟、伊丹十三、ミッキー・カーチス、ジュディ・オング(映画初出演)、千石規子で、音楽は黛敏郎、特撮監督には円谷英二、セリフは全編英語、ロケ地の長崎にはパール・バックが撮影を見学に訪れています。

ところが、この映画は日本でほとんど公開された形跡がありません。合作映画というからには両国での公開を前提にしていたはずで、日本だけ公開されなかったという事実はいかにも不自然で、なにか公開できないような理由があったのではと深読みしてしまうのです。しかもwikiによれば日本版はアメリカ版よりタイムが25分ほど長く、日本公開用に独自の編集が行われていたことを示唆しています。前述の封印された映画はその封印理由は明白なのですが、この「大津波」に関しては日本でほとんど公開されなかった明解な理由が分からないのです。さらに現在まで日本ではソフト化もされていないという謎作品です。

なにかの情報は得られないかと思い、出演者のひとりである伊丹十三氏のエッセイ集「ヨーロッパ退屈日記」(1965年)を読み直してみましたが、残念ながらこの映画のことには触れられていません。ただし、伊丹氏が1965年の時点で「これまでに出た海外映画は3本」とあることから、「北京の55日」(1963年)、「ロード・ジム」(1965年)とこの「大津波」がその3本で、「大津波」が初の海外映画の出演であったと見られます。


 

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