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 Aug 3,2021

■赤い花白い花

 赤い鳥のメージャー・デビューシングル(1970年)は、A面が「人生」(後に有名になる「竹田の子守歌」の歌詞を変えたもの)で、カップリング曲が今回取り上げる「赤い花白い花」です。

 昔、この曲を聴いた時にどこに「おっ!?」と思ったかと言えば、「赤い花 つんで」の「つんで」のところのコード。おそらく、原曲はマイナー調で「Am - Am - Em - Em」(C調表記)か、メージャー調解釈でも「C - C - Em - Em」だったと思うのですが、赤い鳥のバージョンは「C - Em7/B - Em7♭5/B♭- Am7」とベースの半音下降の上に実に巧みなコードが付いています。その3番目のEm7♭5/B♭で「おっ!?」と思ったのです(この後もコード進行はフォークの界隈ではまずないほど巧みです)。当時の私が反応したのは、まさにこのフラット5thの音。当然ながら、当時はフラット5thの意味も分からず、ただギターコードが今までにない変な押さえ方だなと思っていただけでした。

これ、編曲がジャズ系の大野雄二さんだったからこそ付いたコードだろうと感じます。このコード付けによりわらべ歌のように素朴なこの歌がいきなり洗練されて聴こえたのです(ちなみに1976年のビッキーズのカバーでは普通のコード進行になっています)。ただ、より素朴な方向にいきたかったと思われる当時の赤い鳥がこの編曲をどう思ったかかは興味のあるところです。おそらく大野さんを起用したのは、赤い鳥をより洋楽的な方向へもっていきたかった節のある村井邦彦さんだと思うのですが。

で、この展開、なにかにあったなと思い出すと、オフコースの「僕の贈り物」。この曲の頭はおそらく「赤い花白い花」のコード付けから影響を受けていると思われます。こういうコードは鍵盤楽器系の人でないとなかなか行けないコードかもしれません。


 

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