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 Sep 5,2022

■ユーミンを生んだ環境

 以前、ユーミンの生まれた八王子の駅に降り立った時に、ああ、ユーミンの音楽はこの空気感から生まれたのかと妙に納得したことがありました。

横浜線に乗って八王子に向かうと、相模原あたりでなにか空気感が山のそれになり、橋本を過ぎるともう明らかに山の感じになるんです。体感的には気温が2〜3度下がる感じ。季節は秋から冬で、空気もしっとりしていて、霧とか靄が立ちそうな感じ。

頭の中に浮かぶイメージは、まだ10代のユーミンがつっかけかなにかを履いて、小雨の中を縁側から木戸のポスト(そんなものが実際にあるかどうかは知りませんが)まで郵便物を取りに行く光景です。

私がユーミンの中で個人的に好きなのは、まだヒットが出る前のあやうい感じの頃。デビューアルバムからリアルタイムで聴いていましたので、たまに「ヤングインパルス」とか「ぎんざNOW!」とかのテレビ出演も食い入るように見てました。とにかくこの才能はただものではないと。そして、こんな人を世の中が見逃すわけないとも。

その時は直感的にすごいと思っていたわけですが、自分がプロになってから曲を分析して何度も驚いたことがあります。この時代にこんなことをやってたんだと。言い方を変えれば、歌詞も含め、ユーミン登場以前と以降では職業作家に要求される曲も全然変わったと言っても過言ではないと思います。

もうひとつ、強調したいのはいつの時代でもユーミンはリスナーが自分に期待しているものを踏みはずしていないこと。売れるといきなり時代の趨勢を無視して独自の方向へ突っ走る人もいる中で、ユーミンはその軸が今も昔も全然ぶれていないんですよ。これもある種の才能だと思っています。

追記:「きっと言える」のイントロのギターのシュワシュワしてる音はフェイザーかと思っていたら、なんとユニヴァイブだそう。ギターマガジン2022年11月号を見て知りました。


 

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