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 Apr 25,2023

■三島の悪趣味

 先日、ドナルド・キーンの三島由紀夫について語った本を読んでいて、うわ、本当だ、と思ったのは、あれほど武士道だ、葉隠だと日本固有の精神を敬愛していた三島の家に日本的なアイテム、例えば仏像とか日本画とか、そういうものが全くないという指摘。

もちろん、三島はあの家を建てる時も、調度品を揃える時にも、ごてごてした様式を意識してやっていたわけで、鎌倉あたりに純和風の家を建てて住むような文士の姿とはかけ離れているわけです。

私が思うに、三島はそのような典型的な日本の文士という生活スタイルが大嫌いでしたので、それが増幅されてあのような過剰な家や調度品になったのではないかと。決して趣味がいいとは言えない三島のカジュアルな服装も、ステーキをばくばく食べるスタイルも、ばか笑いも、上半身はだかで人を迎えてしまう感性も既成の文士スタイルへの反発から出たものではなかったかと思うのです。

三島が嫌悪したのは、虚弱で、やせていて、神経質そうで、カルチモンを常用していて、末はゲイシャと心中するような、あるいは、お腹が出ていることを良しとしているような日本の定型的な大物文士のスタイルで、それ以外のセレクトならなんでも良く、そのひとつがあの西洋ごてごて趣味だったという気がするのです。そして、もうひとつのベクトルがあの軍服系。文士と軍服なんて全く接点がない存在ですので。このように実は冷静に自分の見られ方を演出していたのも「仮面」のひとつだったと言えるかもしれません。

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