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 Jul 10,2023

■三船と雷蔵

 1968年あたりに突如日本で巻き起こったGSブームで、子供心によく覚えているのは女性的なイメージのメンバーが異常な人気を博していたことです。例えば、タイガーズのジュリーはニックネームから女性名だし、オックスの赤松愛はモロに女性的なイメージを売り物にしていました。

このあたり、なにがルーツなのだろうと考えると、やはり男性が女性を演じるという歌舞伎の女方から脈々と受け継がれたものだという気がします。明治時代には女方の入った風呂のお湯をファンが競って買ったといいますし、女性的な男性に女性が惹かれるというのは昔からあった伝統のようです。女性が男性を演じる宝塚もその変形のひとつといってよいかもしれません。

なるほど、そう考えると映画の黄金期に極めて男っぽい三船敏郎が人気を博す一方、女性的で線の細い市川雷蔵のような人が圧倒的な支持を集めた理由がよく分かるのです。ミーハーの語源とも言われる長谷川一夫もどちらかといえば女性的な印象です。

ちなみに写楽や北斎や国芳の歌舞伎絵の女性も実は男の役者が演じている図で、現代まで綿々と続いている芸事にまつわる日本独特の流儀は興味深いです。


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