■昔の猫
今の猫は専用フードを生まれた時から食べているし、医療も発達したので、概して長生きになったと思います。
思い出してみると、私が子供の頃にはキャットフードなんて売っていなかったし、動物病院だってなにかお化け屋敷みたいなところしかありませんでした。ペットショップで売っているのは鳥や金魚がメインで、猫なんて見たことはありませんでした(余談ですが、つい最近まで、石川町に石田小鳥店という店がありました)。当時の猫はおかかごはんとか茹でた魚とか、ほぼ人間と同じようなものを食べ、外へは平気で出るし、1日ぐらい帰ってこなくても、家族の誰もあまり心配しなかったような気がします。
私が小学校の時に同級生にもらって飼っていたオス猫はよくけんかをして帰ってきて、耳に黴菌が入り腫れ、そのままくっついてしまったので、片方の耳が餃子みたいになっていました。私がシウマイ弁当を食べていると(また余談ですが、私は子供の頃にシウマイ弁当をあまりに食べ過ぎたせいで、シウマイが今でも苦手です)、その中の焼き魚をよく与えていましたが、今考えると、あの塩分はすごかったと思います。
そういえば、ある昭和の作家の猫は、塩漬けのオリーブが好きで、一度に30個も食べたと書いてありました。また、今は猫に与えてはいけないとされるチョコレートもよく食べると書いてあります。
まあ、昔の猫と人間の関係はこんな感じで、ある種の距離感と達観があり、人間は人間、猫は猫という世界を互いに侵し合うことなく守っていたのだと思います。少なくとも、猫を過度に擬人化して見ることもなかったし、ちょっと猫がお腹を壊したぐらいで人間が慌てふためくなんてことはなかったと思います。
猫にとっての幸せとは、おそらく長生きすることではなく、短命でも自由に生きることだったのだと思います。長生きして欲しいというのは人間の勝手な希望であって、猫はただただ本能に従って日々を過ごしていくだけで、その中には死なないようにするという項目はあっても、長く生きるという項目はないのかもしれません。
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