■1954年の日本のジャズメン
1950年代にはジャズバンドの登場する日本映画がよく作られていたようです。
例えば、有名なところでは石原裕次郎さんがドラマーに扮する「嵐を呼ぶ男」(1957年)。この映画のバンドマンは俳優が扮していて、楽器演奏もマイムですが、実際に当時の人気バンドが出演して演奏している映画も少なくありません。
そんな映画のひとつが「乾杯!女学生」(新東宝 1954年)。雪村いづみさんが主役の学園もので、まだ17歳の雪村さんも劇中で「ベルボトム・ブルース」(オリジナルはテレサ・ブリュワーの1954年のヒット曲。雪村さんとブリュワーは声がよく似ており、雪村さんのデビュー曲がブリュワーのカバーだったのもうなずける)や「恋して頂戴」(オリジナルはジョー・スタッフォードの'Make
Love To Me'。これも1954年の曲)を歌っていますが、この終盤に本物のジャズミュージシャンが登場します。ピアノは中村八大さんで、ベースは後に渡辺プロを創業する渡辺晋さん。また、渡辺晋さんがリーダーのシックス・ジョーズのギターは宮川協三さんの時代で、この人はなんとナチュラルのギブソンES-5を使用しており、当時の一流ジャズミュージシャンがいかに羽振りが良かったのかが伺えます。まだ戦争が終わってから10年経っていないこの時代に、アメリカ製のギター、しかも最高グレードのものを使用した人はあまりいなかったと思います。ちなみにカッタウェイのノブはマスタートーンで、各ピックアップに対応する3ボリューム、ミドルとリアをフルにするとアウト・オブ・フェイズになるとのこと。
もうひとつ、この演奏シーンで見入ってしまったのは、ドラムの南廣さん。南廣さんといえば後に俳優に転向し、特に我々の世代ではテレビのウルトラシリーズやマイティジャックで見覚えのある方ですが、この人のドラマー時代の映像はかなりめずらしいのではないでしょうか。
そういえば、フランキー堺さん主演の「初恋カナリヤ娘」(1955年)にはノークレジットで、後にクレイジーキャッツとなる植木等さんや桜井センリさんがバンドマンとして出演されています。また、どの映画かは失念しましたが、安田伸さんもビックバンドの一員として登場している映画もあったと思います。1970年代には「ヤスダァ〜」とか言われて、なべおさみさんとコメディをやっていましたが、安田さんは芸大出身バリバリのミュージシャンです。
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