■「A列車で行こう」の謎解き
「A列車で行こう」(Take
The A
Train 1939年)は特にジャズファンではなくても知っているスタンダード曲だと思いますが、これについてとても面白い指摘をしているジャズミュージシャンがいました。
曲の冒頭、下譜面の矢印部分はフラット5thという非常に不安定な音に行っているのですが、これには理由があるというのです。
汽笛の音というのは、注意を喚起する目的ですので、きれいな和音では不都合で、音程をあてはめると実に不安定で耳障りな配列で出来ています。こんな感じではないですか?
フルートの音色で汽笛をシミュレートした音の配列
G♭・A・C・E♭・G♭・A (音が出ます)
これをコードネームで表すと、ディミニッシュという不安定な響きを持つコードで、これがなぜこんなに不安定に聴こえるかといえば、構成音にトライトーンという音を含んでいるからです。トライトーンというのは2つの音の間が3全音の音階のことで、これがまさにルートに対して♭5の音というわけです。ちなみに上の汽笛のシミュレート音ではAに対してE♭、Cに対してG♭がトライトーンです。
つまり、「A列車で行こう」の作者ビリー・ストレイホーンはこの汽車の汽笛の音をシミュレートすべく、♭5を使ったのではないかという仮説です。実に興味深い見解。
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