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 Aug 5,2024

■松崎さんのこと

 1990年代、松崎しげるさんに何曲か曲を提供しました。松崎さんが今でもキーを落とさずに「愛のメモリー」を歌っているのは本当にすごいと思います。あの曲、トップの音はCですから、山下達郎さんの曲の中でもひときわキーの高い「Love Space」のトップの音Bよりも半音高いです。

松崎さんの若き日を知る方が業界にいらっしゃって、よくお話を伺いましたが、本来、松崎さんは歌謡曲畑の人ではなく、初期のガロとかその界隈にいた人だったんですね。それが歌唱力を買われ、歌謡曲のフィールドから売れた人という感じでしょうか。大橋純子さんもそんな感じですね。

ところで、1991年に松崎さんがリリースした「夏の夢」というシングル、確かビールのCMタイアップが付いていたと思いますが、このイントロ、間奏、アウトロのコーラスは作曲の馬飼野康二さんに呼ばれて、私がひとりで全パートを歌ったコーラスです。ちなみに馬飼野さんにはCMのボーカルでもよく呼んでいただきました。私の記憶では、馬飼野さんの自宅スタジオは都内のレコーディングスタジオと比べても遜色ない規模で、SSLのコンソールが入っていたと思います。

 松崎しげる  - 夏の夢 (youtube.com)


そういえば、松崎さんはサウスポーですが、ギターは右用に弦が張られたものを逆さまに弾いているんですね。つまり、高音弦が上に来て、コードの押さえ方も上下反転させたような独特なフォームになるというわけです。アルバート・キングとか黒人のサウスポープレイヤーにたまにこういう弾き方をする人がいますが、日本では甲斐バンドの甲斐さんがこの弾き方でした。この弾き方の利点は、カッタウェイやピックガードが上に来たり、エレキギターならコントロールが肘のところに来たりする不都合を除けば、右用のギターがそのまま弾けることです。反面、レフティのギターでは弦を右用に張り替えるセッティングをしなくてはならず、かなり面倒なことになります。マッカートニーもこの弾き方が出来て、ウッドベースを弾く時は体側に高音弦が来ていますが、自分のギターやベースの弦の張り方は左用です。

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