■有楽町で逢いましょう
先日、大映の「有楽町で逢いましょう」(1958年)という映画を観たのですが、この映画、フランク永井の同名のヒット曲から作られたのだろうと思っていたら、全く逆でした。
元々「有楽町で逢いましょう」というフレーズは有楽町に1957年5月に開店する有楽町そごうのために作られたもので、そのキャンペーンの一環でフランク永井の曲が作られたのでした。その他にも、テレビではそごうの1社提供で同名の番組や「週刊平凡」には同名の連載小説まであったとのこと。今でいうメディアミックスですね。もちろん映画もこの一環で、多くのシーンが有楽町そごうでロケされており、特にエントランスの2Fにある「そごうパーラー」はよく出てきます(この時代の他の映画でも見た記憶があります)。
つまり、フランク永井の曲は有楽町そごうとのタイアップで、その中に出てくる「ティールーム」とか「デパート」とかいう言葉はモロに有楽町そごうのことを指しているわけです。それにしても、この時代は詞が先に出来ていて、それに曲をつける詞先だと思いますが、この曲、マイナー・メロの淋しい曲です。当時のヒット曲のマナーはマイナーの曲だった様子が伺えますが、今の感覚なら「あなたとわたしの合言葉、有楽町で逢いましょう」なんていう歌詞を見たら、どう考えても明るいメージャーのメロがつきそうですよね。
ちなみに映画の中で歌われるもうひとつの劇中歌、藤本二三代の「夢見る乙女」はシングル「有楽町で逢いましょう」のカップリング曲ですが、これもマイナー。この歌詞の中にも「有楽町」や「心斎橋」(映画の冒頭は心斎橋のそごうでロケ)という言葉が出てきます。こっちの「青い山脈」のような曲調を聴くと、フランク永井のゆっくりとしたシャッフルのリズムは都会的にも聴こえます。
余談ですが、東映の「宇宙快速船」(1961年)という特撮映画には有楽町そごうが円盤からの攻撃で破壊されるシーン(タイムの1:01:30あたり。この特撮は実写とミニチュアを破壊される直前で入れ替えているようで、驚くほど良くできています)が出てきますが、そこには「開業5周年謝恩特別大奉仕」の垂れ幕が見えます。
この有楽町そごうは現在のビックカメラ有楽町店で、内装はそごう時代の面影はありませんが、JRの高架側に長辺を持つ三角形の土地に建てられた建物自体は建て直されていません。
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