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 Nov 28,2024

■「地球最後の日」感想

 「地球最後の日 When Worlds Collide」は1951年公開のアメリカ映画。ずっと前のテキストでこの映画のことは書きましたが、サブスクで観出したら、やはり引きこまれ最後まで観てしまいました。

この映画に引きこまれる理由は、パニックムービーというジャンルであるにもかかわらず、人間ドラマが色濃く描かれていることです。最初は軽い男のように描かれるパイロットが実は聖性を持っていたり、地球脱出のロケットの資金を出した男の凄まじい生への執着だったり、つまり、生きるか、死ぬかという極限の中で、むき出しになる人間の聖性と俗性のせめぎあいの物語です。

まあ、原作はほぼ1世紀前、映画は半世紀以上前の作ですから、当然、色々と突っ込みどころもありますよ。例えば、プロジェクトの中心人物とはいえ、博士がなぜ生死を分ける乗員を選ぶほどの強い権限を持っているのかとか、娘は無条件にメンバーに入っているという身内贔屓のセレクトとか。抽選をしたにもかかわらず、恋人の片方が選に漏れると、両方乗せちゃうアンフェアさとか。また、これはアメリカのどこかの一部の地域の話で、他にもロケットはたくさん飛ばすのだろうということを念頭にいれても、ほぼ白人しか乗っていないのは、まさにこの時代のハリウッド映画で、視点を変えれば超大国アメリカの驕り高ぶりと言えないこともありません。

加えて、この映画が製作されたのは第二次世界大戦が終わってから、わずか5年しか経っていないぐらいの時期で、朝鮮戦争は始まっているし、日本はまだ占領下だし、中国は共産側が勝利してアメリカと敵対。世界会議のようなシーンに日本も中国も出てこず、独立直後のインドだけがかろうじて登場するのは、この時代のリアルなバイアスでしょう。

原作は1930年代に発表された同名の小説で、小説には続編もあったとのこと。そういえば、映画のラストシーンでたどり着いた新しい星の風景に人工の建築物(ダム?)みたいのがあるんですよね。これは製作されなかった続編の伏線だったのでしょうか?

(写真はまだ持っていたこの映画のLD)


 

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