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■厄介なレイテンシ

 
の経験から言えば、音楽製作過程におけるトラブルはハードの故障よりも人為的な操作のミスであるケー
スが圧倒的に多いのですね。ただし、あまりにも複雑化してしまった現在の環境では、その原因がどこにあるの
かを特定することさえ困難になってきているのだと考えます。

けれど、やはりトラブルはハードに原因があるケースもあるのです。テンポという時間軸が重要な音楽製作にお
いてレイテンシ(発音の遅れ)は結構ありがちなトラブルです。これは多くの重いデータなどを集中させて、同時
に発音させる場合にCPUの処理速度が追いつかなくなり、発音に微妙な遅れが生じるわけです。

例えば、私はかつて同時発音数64ボイスのオール・イン・ワン・シンセというのをメインにしていました。当時、64
ボイスという規格は最新鋭で、これで多くのモジュールを立ち上げることなく、1台完結だなと思っていたのです
が、これがそうではなかったのですな。1音が3ボイスから成るようなピアノなどの重い音源を使い、ペダルを多
用すると64ボイスは実質21ボイスとなり、たちまち消費してしまうのです。そこにドラムやベース、うわモノなどを
入れていくとCPUは後からの信号を優先させる処理を始めるのですが、これが追いつかなくなると、カクカクとし
たテンポになってしまうのでした。

ソフトは進化し続けますが、より重く、多機能になり、ハードにさらに負荷をかけます。つまり、最新鋭であれば
あるほど、取り残されたシステムの弱い部分が顕在化するという結果が出るのですな。

                                                           2003/9/9

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