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■シングルのB面

 
の発注を受ける時に「シングルのB面をお願いします」とは決して来ないわけで(笑)、そういう意味ではB面
というのはなかなか微妙なポシションだと思いますな。

では、どういう曲が図らずもB面になってしまうかというと、そこにはレコード会社サイドの思惑などが見え隠れす
る結構
大人の世界(笑)が展開しているというわけです。例えば、シングルを決めるために多くの曲をプレ
ゼンする場合、当然、社内で複数に意見などを聞いて決定するのです。そこで一番支持された曲がA面にな
り、次点となった曲がB面になるというケースは一般的だと思います。ですが、次点以下にいつも世話になって
いた り、著名な作家の作品があったりするとちょっと事情は異なってくるのですな。レコード会社はその作家に
今回 はごめんなさい(常套句なので作家を目指す方は覚えておきましょう・笑)の意味で作品をB面
に採用したりすることもあるのです。この時点でやはりB面ではいやだと作品を引き上げる作家もいますが、す
でに本録音が終了しているケースが多く、そのオファーを受けるという例がほとんどでしょう。

これは職業作家の世界の話ですが、これがバンドだったりグループだったりすると事はもう少し複雑な様相を呈
してきます。グループ内に複数のソングライターがいる場合、どの曲をA面にするかは大論争で、それが感情の
もつれとなり、解散の原因になったりすることもしばしばあります。そのバランスをとるためにB面が使われたり
するのですな。思うに、グループというのは結局、一人の才能にスポットライトが当たってしまうケースが多く、そ
れを他のメンバーが許容できるか否かで長く続けられるかどうかが決まるような気がします。解散の理由は音
楽的見解の相違などと言いますが、最初は本当にそうだったとしても最後にはもっと人間的な理由ってことがほ
とんどですね。それはビートルズの例を見るまでもないでしょう。

とは言いつつも、B面に隠れた佳曲が存在することも事実。しかもアルバムに収録されなかったりすると「幻の」
なんて形容詞がつくこともしばしばあるのはご承知の通りです。
稲垣潤一「クリスマスキャロルの頃には」(1992年)
このミリオンヒットのB面は私が以前アルバムに書い
た曲の新録音バージョンでした。 こういうケースは
めったにありません。

                                                          2002/7/23

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