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May 8, 2006 

■ロバート・ウィテイカーの写真集

 
バート・ウィテイカー(ウィタカーとの表記もあり)は1966年頃にビートルズの専属カメラマンとなって、ツア
ーにも同行していたカメラマンです。「ブッチャー・カバー」(*)を撮った人と言えば、覚えのある方も多いのでは
ないのでしょうか。

今年はビートルズ来日40周年ということで、ウィテイカーの豪華限定版写真集「ビートルズ・イン・ジャパン」が発
売されましたので、それのレビューを少々。

実は以前にもウィテイカーは「THE UNSEEN BEATLES」という写真集をボブ・ウィテイカー名義(ボブはロバートの
愛称)で出していて、それには多くの日本滞在の写真が含まれていました。なので、今回の写真集には既出の
作品もあるのですが、初登場と思われる写真も決して少なくありません。例えば加山雄三氏との写真。有名な
のは加山氏が頭に手をやっている写真ですが、その時に撮られた別テイクを私はこの写真集で初めて見まし
た。

彼の写真で興味深い点のひとつは、ビートルズとほとんど行動を同じくしているためにビートルズ側の視点から
のショットがたくさんあることです。ビートルズが見たであろうヒルトン10階から赤坂の南西方向を望んだ風景。
今はなき山王ホテルや、TBSの電波塔なども遠くに見えています。ビートルズがあの時代にあの場所にいたと
いうことを私などはなかなかリアリティを持って感じることができないのですが、当時のヒルトン界隈の写真は
探し当てたジグソーパズルの1ピースのように、非日常と日常とを繋ぎ合わせ、前代未聞のこの出来事の輪郭
を鮮明に浮き立たせます。

ステージを捉えた写真でも見たことのないショットがあります。特に驚くのは今まであまり出てこなかった最終
日、7月2日のものです。最終公演でジョンがサングラスをかけていたという話はこれまで何度も耳にしましたが、
これほどまでに鮮明な最終日のステージショットが存在していたとは思いませんでした。

<<月刊「PLAYBOY」6月号の表紙になったウィテイカーの作品。
ビートルズが武道館のステージに上がるシーンを後ろから捉え、さらに天井か
ら下がる日章旗をフレームに入れた有名なショットです。ビートルズ自身がス
テージに上がる直前に見た風景。こういう瞬間を切り取れるウィテイカーの感
性に敬服いたします。

*ブッチャーカバー〜米キャピトルのアルバム「イエスタデイ・アンド・トゥデイ」のオリジナル・ジャケット。ビートル
ズが白衣を着て、生肉や人形とともに写っており、リリース直後にクレームが殺到し、回収された。

岸正之ホームページ kishi masayuki on the web


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