■目からウロコ
私が今になってあれはいい経験だったと思えることのひとつは、若い頃に一流のスタジオプレイヤーの演奏
を目の当たりにできたことでした。
いや、それまでは機会があれば、ギターも自分でレコーディングしてみたいなどという思いもあったのですが、
今剛さんのプレイを聴いた時に、ああ、これがギターでメシが食えるということだなと妙に納得して、私のギター
プレイに執着する思いはなくなってしまったのです。つまり、クラプトンのクロスロードを完コピで弾けて喜んでい
るレベルではないなと。今さんが目指している世界ははるか上方の、自分からは見えてもいない世界だなという
ことを悟ったのですよ。
思えば、それまでほとんどアマチュアレベルのプレイしか知らなかった私がいきなり途中の段階を飛ばして、ハ
イエンドの世界を垣間見てしまったのですから、その衝撃たるや、私にギタリストとしての幻想を捨てさせるに
十分なものだったのですよ。そう、それはちょうど小学校では結構成績良かったのに、進学校の中学に入った
ら、私ぐらいの学力の生徒はあたりまえか、並以下で、はるか上には次元が違うほどできるのがごろごろいると
いうような状況に近いものでした(ちなみに私の実話です・笑)。
それが、なぜいい経験だったのかと言えば、楽器演奏という選択肢を捨てたことで作曲という自分にとって戦力
となるものが明確に見えたことだったんですよ。
|
<<今剛氏、唯一のソロアルバム「スタジオキャット」(1980年)。
このジャケットに写っているギターは私のレコーディングにも持ち込まれて
いました。
ちなみに今剛氏を私のファーストアルバムのアレンジャーとして引き合わ
せてくれたのは当時のディレクターのM氏でした。今でも素晴らしい人選で
あったと感謝しています。 |
|