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May 6, 2008 

■マッカートニーのファースト

 
近、良く聴いているのはポール・マッカートニーのファースト・ソロアルバムの「マッカートニー」(1970年)。

これ、最初に聴いた時は音質や作りなどすいぶんラフな出来だなと思いました。レコーディングテストみたいなイ
ンスト曲がたくさん入っているのにも閉口しました。これがサージェントやアビーロードで緻密な音作りのイニシア
チブをとったポールと同じ人なの?と思ったほどです。

ところが今聴いてみると、これがなかなか味わい深いのですよ。なにより、ポールの声質が若いだけに実になめ
らか。これだけはいくらテクノロジーが進んでも再現できないポイントです。「ジャンク」と「メイビ・アイム・アメイズ
ド」だけはまあいいなんて評論は多かったけれど、「エブリ・ナイト」とか「ウー・ユー」も案外隠れた佳作。後の相
性の悪いプロデューサーとした仕事より格段にポールらしさが出ています。あとはビートルズ末期にポールが秘
密裡に制作していたデモテープがEMIの倉庫から発見されたみたいな気持ちで聴けばいいんだと思います。

「ジョンの魂」(1970年)があれほどシリアスだったのに対し、このアル
バムを支配する「なげやりさ」はポールの内面にビートルズ解散の傷
がより深くついていたという証拠だったのでしょうか。

岸正之ホームページ kishi masayuki on the web


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