■TEXT

Nov 5, 2008 

■中華街〜その2

 
々に中華街に行ってから、とても気になってしまい頭から離れなくなってしまった店がありました。

変化の激しいメインストリートにありながら、ひときわ異彩を放ち、外にメニューや価格などは一切なし、ランチメ
ニューもなし、ウェブサイトもなし、中華街のサイトを見ても写真掲載は拒んでいる模様、私にはそのような頑なと
も思える店の方針がこの経済主導のご時世にとても気骨があり、好ましいもののように感じたのですよ。観光客
や一見さんはまず入らないと思われるその店の名は「安楽園」といいます。実はその店の印象的な佇まいは、
子供のころから不思議な感覚とともに頭の片隅に残っていました。

今、行かなくていつ行くんだと思い立ち、日を改めて行ってきました(しかも、2日続けて)。

<<これ、昭和の時代の箱根とか日光じゃないですよ。2008年
の横浜中華街のど真ん中です。中華街の大通りでもこの店
の前だけは明らかに違う空気が流れています。観光客や修
学旅行生などはほとんど見えていないかのようにスルーして
いきます。

正面には「営業中」、「麺類・炒飯もございます」の札のみがかかっています。「麺類・炒飯もございます」の「も」
に敷居の高さを感じるの私だけではないでしょう(笑)。正面右の入り口からひとりで躊躇なく入ると、中のロビー
に座っていたお店の人がなぜかちょっとびっくりされていたような感じでした。正面から見て左の部屋(ここが雪
という部屋らしい)にていねいに案内され、メニューが出てきて、中華街にしてはめずらしく日本茶が出てきまし
た。この部屋は床の間や掛け軸などのある和風の部屋で、ロビーから一段高くなっています。

<<正面左の窓を内側から見た写真です。たいへんに
凝った造作です。窓の外は中華街のメインストリートです。店の奥からかすかに誰かが話しているような音が聞こえ
ますが、2日ともにお客さんがいるような感じはしません。
音楽もありません。

初日は五目焼きそば、2日目は肉細切りたんめん(たんめんですがしょうゆ味)をいただきましたが、細麺、昔風
のややこってりとした味付けで普通においしいです。お値段はどちらも\1,000ぐらいです。この店を時代に取り残
されたただの古い中華料理店ととるか、古き良き中華街や横浜のムードを持つ宝物のような店ととるかは人そ
れぞれですが、ひとつだけ確かなことはこの手の店はガイドブックの星の数以上のなにかがあるということです。
会食で行くには相手を選ぶ店ですが、ぜひ、ずっとこのままで残っていて欲しいです。

岸正之ホームページ kishi masayuki on the web


<<   TEXT MENU   >>

HOME