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Nov 2, 2009 

■ケンジントン(ただしレプリカ)を弾いてきた

 
ォックス・ケンジントンというのは、イギリスのヴォックス社がジョン・レノンのために作ったワンオフのギター
です。1967年あたりのビートルズの写真でジョンが使用しているショットがありますが、その写真すら非常に少
ないために、ギターの詳細はわからず、まさしく、まぼろしのギターだったといっても誇張ではないと思います。

それが数年前のクリスティーズ・オークションに突然出てきたのですな。ジョンから譲り受けた関係者が出品し
て、ジョンが使ってたそのもののギターが出てきたのです。今まで小さい写真でしかそのギターを見ることはで
きませんでしたが、そのオークションの写真で初めてこのギターの詳細な外観や仕様が判明したというわけで
す。

ビートルズの使用ギターであれば、どこかのお店やメーカーがレプリカを作らないの?と思うわけですが、それが
そうはいかなかったのですな。その理由は、推察するに、1) このギターがあまりにマニアックな存在で、ジョン
のファンですらその存在を知らなかったこと、2) このギターそのものが非常に変った形で、かつ特殊な形状の
パーツも多く、作るとなれば非常に手間がかかること、3) 電気回路部分が複雑で、これも再現するには非常に
手間がかかること、などなど。つまり、時間も手間もお金もかかり、さらにニーズも見えないブツの製作には誰も
手を出さなかったというわけです。

ところがっ!(笑)、その高〜いハードルを乗り越えて、これを作っちゃったお店が現れたのですよ。それは横浜
にあるビンテージギターやさん。お店自体は面白そうなギターやさんができたなとなんとなく認識しておりました
が、このレプリカをサイトで見て、これは尋常ではない凝り方だと感じ、初めて訪れてみました。

お店の人に話を伺うと、サイズは写真から割り出したものらしいです。第一印象は思ったより小さいギターだなと
思いました。写真からスケールはショートスケールということが判明したのだそう。電気回路部分はヴォックスの
他の機種でほぼ同じものがあるので、当初は移植しようと思ったらしいのですが、その機種自体が激レアで見
つけるのが不可能、結局、単体のエフェクターをばらして組み込むということになったのだそうです。ちなみにリ
ピートパーカッションはヴォックスのオリジナル、ファズはsola soundって言ってたかな。このセレクトもかなり正し
いと思います。

デモ機はまだプロトで、電気回路部分が完全ではなかったのですが、それでもリピートパーカッション(トレモロの
デプス10みたいなエフェクト)とファズ、トーンのブーストは使用可能でした。しかし、このプロトの木部はすごく
よく出来ています。ショートスケールにもかかわらずピッチは正確だし、アクションも低い。ネックはやや太めで、
シングルコイルピックアップなのにホローボディの効果でしょうか、非常に音が太いです。うーん、このセッティン
グ、絶妙だなぁ。個人的には内蔵されている各種のエフェクトよりもむしろこのギターとしての完成度に驚いてし
まいました。

ちなみに価格はマーティンの上位機種D-45の新品の売価とだいたい同じぐらい。オールハンドメイドで、パーツ
の類も他から流用できるものが少ないということであれば、この価格になるのでしょう。それにしても、こんなピン
ポイントのブツをレプリカするとは・・・この楽器やさん、気合入ってますなぁ。商売だけだったらこんなに効率の
悪いことはしないのでしょうな。実はこのピンポイントのレプリカシリーズは第2弾もあるとのこと。期待です。

本物はこちら 
Vox Kensington at auction 2004

岸正之ホームページ kishi masayuki on the web


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