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Apr 29, 2010 

■Linnの時代

 
1982年ごろに、Linnというドラムマシンが登場して、これはすごいということになって、様々な現場で使われ
始めたのです。これはどういうものだったかというと、実際のドラムの音がPCM録音されていて、それを組み合
わせ、プレイバックすることによってドラムのトラックが作れてしまうというものだったのです。

で、こういうものは出てきた直後はみんな絶賛して、使いまくるわけですが、ちょっと経って冷静に聴いてみると、
なんか生のドラムとは違うということに気づき始めるわけです。当時のPCM録音の技術は今と比べ物にならない
ほど低スペックでしたので、まず音自体がすごく荒く、ダイナミクスやクオンタイズにも明らかに限界があり、どん
なに緻密にプログラミングしても、機械くささを払拭できなかったのです。でも、そんなことに気づくのは後になっ
てからのことで、当時の音楽にはジャンルを越えて限りなく使われていました。

今、このLinnが使われている音源を聞くと、まあ、どうしようもなく残念な気持ちになるのですよ。Linn以外は生
演奏というケースがほとんどですが、生演奏独特のグルーブがLinnによってスポイルされているので、演奏自体
も非常に単調、さらに大抵Linnが大きくミックスされているので、全体的な音質もすごく荒く聞こえてしまうのです。ある意味、このLinnが珍重されていた数年の音楽はそれ以前のものより古臭く聞こえてしまうのですな。

まあ、そういう私も当時はLinnすごいなんて思っていたわけで(笑)。Linnだけではなくて、初期のデジタルレコーダーなども今聴くと、なんて薄っぺらで、立体感のない音だったんだろうと感じている次第です。

4月は本当に天候不順でしたねぇ。寒かったり、大雨だったり、
強風だったり。


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