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May 25, 2010 

■今剛さんのこと

 
タリスト今剛さんのことについては、過去に何度か書きましたが(ここここ)、2009年7月号のギターマガジ
ンに非常にめずらしいロングインタビューとセッションリストが載っていたのを最近知りました。出版社サイトのバ
ックナンバーはすでに売り切れでしたが、なんとか入手して読むと、これは保存レベルの貴重な資料です。

今さんのギターのトーンは本当に独特です。誰々に似てるというトーンじゃないんですよ。まさに今さんの音。松
原正樹さんはちょっとスピーカーを通ったような、粘りとか空気感があるけど、今さんのトーンはそれがないので
すよ。ドライですごくクリーンな音。機材に関しても、車の世界でいえばF1。ビンテージとかそういうものに興味は
なくて、その時々で最新の一番いいものを使うっていうセレクト。今さんの音をスタジオで聴いたときは、本当に
びっくりしました。だって、それまで聴いていたフェンダーのギターをツインリバーブにつなげて、エフェクターをか
ましたみたいな音じゃなかったでしたからね。機材もそれまで見たことないようなものばかりだったし、スタジオ
グレードのラックのシステムを組んでいる人もあまりいなかったと思います。今さんの場合は自分の出したい音
が明確にあって、それを出すために色々セレクトしていたらあの巨大なラックシステムに行き着いたって感じな
のでしょうね。1980年代のスタジオキャットと音と、現在の音は若干変ったけどそれでも今さんのギターの音は
すぐ分かります。

そして、あの独特のコードと強力なカッティング、流れるようなソロ。YouTubeにめずらしい3コードのソロがあった
のですが、これがすごく興味深かったなぁ。なんていうんだろう、次のコードが見えるようにつながっていくソロ
なのですよ。今さんのギターを聴いていると、強制的に色々なことを考えさせられます。研ぎ澄まされて本質が
見えてくるというか。

で、あういうギターを弾く今さんの音楽的ルーツについては以前からすごく興味があったのですね。でも、今さん
に関しては音楽的なバックボーンとかネットでも驚くほど情報がないのですよ。カントリーミュージックもルーツの
ひとつだってことは予想がつきましたが、このインタビューによれば、ピンクフロイドとかジェネシスなどのプログレ
系もよく聴いていたという発言にはちょっと意外でした。たぶん、聴く時に普通の人が受け取る情報量の何倍も
受け取りながら聴いているんだと推察いたします。


先日、実家に寄った時にサルベージしてきたレコードなの
ですが、なんと全部、今さんが参加していました。
清水信之「Anything Goes」、井上鑑「予言者の夢」
「スプラッシュ」。



岸正之ホームページ kishi masayuki on the web


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