■「君は薔薇より美しい」考
布施明さんの1979年リリースのシングル。
当時、この曲を聴いた時に「おっ？」と思ったのを鮮明に覚えています。「おっ？」の理由は歌謡曲というカテゴ
リーにしてはあまりにおしゃれなメロディ、そしてアレンジだったからです。作曲と編曲はミッキー吉野さん。
今、聴いてみると、これは難しいメロですなぁ。まず、譜割りとシンコペが細かい。元々、テンポの設定が非常に難しい（思っているよりやや遅いのが正解ではないかと）この曲を、生歌番組の毎回違うテンポで歌うのはそれは大変だったのではないかと思います。そして、音域がやや広い上に、最高音が最後に白玉でくるという普通は避けたい構成。オリジナルのキーはAで最後の白玉は地声でAがスコーンと出てる。これ、布施さんだったから、うまくまとめて歌えていたけど、決して誰もがうまく歌える曲ではないですな。駄目押しで3/4のテンポになる作りも見事。
この曲がおしゃれに聴こえる最大の理由っていうのは、キモで出てくるディミニッシュ系コードのせいだってことが
今だから分かるのですが、よくこの曲をシングルにしたなぁと当時のスタッフやミッキーさんの志しの高さを感じま
す。深読みすれば、それまで「シンラメンのかほり」とか和モノっぽいフォーキーな路線を一挙に変えるにはこの
ぐらい色の濃い曲が必要だったのかも。
いずれにしろ、ポピュラリティを意識しつつも、それが優先順位の最初ではなく、自分が思う最良のものを提示す
るっていう姿勢がひしひしと伝わるこの曲、名曲です。
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