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Mar 3, 2012 

■天国と地獄

 
澤明監督の「天国と地獄」を見ました。

私が黒澤監督の作品を見たのは「羅生門」が最初で、ずいぶん前にテレビでやっていたのを何気なしに見た
のです。最初はテンポもないし、説明的だし、つまらなそうな映画だなと寝ながら見ていたのですが、途中から
「おおっ」と思い、がばっと起きて食い入るように見てしまったのを鮮明に覚えています。

「天国と地獄」も最初はそんな感じでした。冒頭、舞台劇を見ているようなテンポのなさに、あー、これは思って
いたのと違うかなと思ったのですが、途中からやはり「羅生門」同様、食い入るように最後まで見てしまいまし
た。ネタバレになるので説明は省きますが、モノクロのこういう使い方もあるのだと感動しましたよ。セットにしろ、
実車両を貸しきっての撮影にしろ、今の時代ならCGによって置き換えられるものはたくさんありますが、そのよう
なギミックが存在しない時代だからこそ、限られた駒を使いきるアイデアの深度が深くなっている気がします。

出演陣は日本の映画界をしょって立つようなクラスの方々がすごい人数出ていますが、1963年の映画ですので
すでに鬼籍に入られた方も多いです。子役で江木俊夫さんが出ていたのにはびっくり。いいものを作るためなら、
手間もバジェットも惜しまない、日本映画にとっても幸福な時代の傑作です。


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