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Sep 11, 2012 

■チップ・ダグラス

 
けてモンキーズの話題です。

「デイドリーム・ビリーバー」の頭に会話みたいなのが入っているバージョンがあります。誰かが「seven A」と
言って、デイビーが「what number is this? Chip?」と聞くというスタジオでの会話と思われるものなのですが、
そこに出てくるChipというのが、この曲のプロデューサーであったチップ・ダグラスのことでありました(余談です
が、この会話部分を杉真理さんが「セブンイレブン!」とか言ってパロディにした音源がなにかのアルバムに
入っていましたな)。

1967年にダグラスがモンキーズのプロデュースをやるまでには、メンバーとそれまでのプロデューサーとの間で色々とトラブルがあり、音楽的にイニシアティブをとっていたと思われるマイク・ネスミスが、タートルズの全米
No.1ヒット曲「ハッピー・トゥゲザー」のアレンジをしていたダグラスに目をつけて、プロデュースのオファーをした
のでした。この変化によってそれまでのスタジオミュージシャン中心のレコーディングから脱却し、メンバーが演
奏に参加する機会が増えました。

ダグラスがプロデュースした最初のシングル「プレザント・バレー・サンデー」はキャロル・キング/ジェリー・ゴフィ
ンの手による巧みな作りの曲ですが、曲の出来の良さとともに注目したいのはこのイントロのギターリフです。こ
のリフは裏拍から入って7拍子というトリッキーなもので、私はキャロル・キングが作ったと見ているのですが、ダ
グラスが考えた可能性も否定できません。おそらく元ネタはビートルズ「ドライブ・マイ・カー」の裏拍から入るイン
トロと、「アイ・ウォント・テル・ユー」のリフでしょうが、ポップミュージックにおいてイントロのリフがいかに重要か
というサンプルですな。このリフはマイクが弾き、ベースはダグラス、ドラムはエディ・ホーというスタジオプレイ
ヤーで、半速で録音したっぽいエレピはメンバーのピーターが弾いたということです。

もうひとつ、ダグラスがモンキーズで残した大きな仕事は「デイドリーム・ビリーバー」です。私の個人的な見解
ですが、ポップミュージックの王道ともいえるこのシャッフルのビートを表舞台に引っ張り出してきたのはビーチ
ボーイズの「ゴッド・オンリー・ノウズ」あるいは「グッド・バイブレーションズ」が起源ではないかと思っております。
それがイギリスに飛び火して「ペニー・レイン」(「ゲッティング・ベター」、「ユア・マザー・シュド・ノウ」も)にな
り、アメリカでは「ハッピー・トゥゲザー」を生み、「デイドリーム・ビリーバー」に至るのですが、これが1966年後
半から1967年のほぼ1年の間に起きていることで、ポップミュージックの連鎖反応は短期間にすごいスピード
で進んでいたのだと驚きます。

 

 チップ・ダグラスの写真はないものかと手持ちのレコードを探したらありました。
ダグラスが一時ベーシストとして在籍していたタートルズ。一番左の人。
ちなみにより「グッド・バイブレーションズ」的なのは「ハッピー・トゥゲザー」より「エレノア」という曲。
テルミンの代わりにポルタメントのかかったモーグまで入っているという徹底ぶり。

岸正之ホームページ kishi masayuki on the web


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