■記憶の行方

　たいていのことはネットで検索すれば分かる時代ですが、案外出てこないのはネットがまだない時代に閉店したレストランや店の情報です。

私が元町のそばに住んでいた時代によく昼食に利用した店などは今はほとんどなく、検索すればまだ情報が出てくる店もありますが、どうしても出てこない店もあります。例えば、元町のメイン通りにあった「桃林」という中華の店は、あんなに目立つ場所にあったのに検索しても全然ひっかかってきません。

そこのゆったりと食事ができる雰囲気とあっさりとした味が好きでした。とうふと野菜のうま煮なんて塩味でおいしかったなぁ。場所は今でもある信濃屋の隣（海側）で、間口のある店舗の2階でした。

それから、学生時代によく行った渋谷の「さかえや」。当時、日本未入荷のブランドの服を扱っていた貴重な店で、口コミでその評判が広がったような感じでした。店の構えは闇市の時代の名残のような木造で、元々は戦後、米軍放出品を扱う店からスタートしたと聞きました。「ミウラ&サンズ」や「シップス」は雑誌でよく紹介されても、「さかえや」はあまり紹介されてなく、掘り出し物もあったんですよ。今、この店をネットで検索しても写真ひとつ出てこないです。