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Mar 13,2014

■梶芽衣子さんの「同棲時代」

 
1973年2月にTBSで放映された単発ドラマ「同棲時代」。キャストは人気絶頂期の沢田研二さんと梶芽衣子さんでした。私はこれをリアルタイムで観て、強い印象を受けた記憶があります。若く美しいふたりが都会の片隅で一緒に住み始めるというその物語は、甘美で、儚げで、多感な時期であった私の心を大きく揺さぶったものでした。そして、このドラマで梶芽衣子さんという女優さんを初めて知ったのです。

後に梶さんの主演している映画をたくさん観て、不良グループのリーダー役や、復讐に燃えるアウトロー役などで刃物を振りまわす様に唖然としてしまったのですが、むしろ「同棲時代」の方が異色の役であったことに気付くのでした。つまり、ツンデレのデレの部分を先に見てしまった私はその後、梶さんのイメージを修正するのに相当時間がかかったのです。1970年代初頭といえば、夢見ていたような1960年代の揺り返しとして学生運動の余波、公害、三島の自決、ビートルズの解散などおよそ明るいとは言えない虚脱感のような雰囲気が漂っていたような気がします。映画で観る黒いコスチュームで常に体制に反抗している役の梶さんはそんな世相を反映していたアイコンだったのかもしれません。

このTBSの「同棲時代」は長い間、マスターテープの所在が不明で幻のドラマと呼ばれていたということですが、2013年に原作の出版社で録画したテープが発見され、全編が残っていたことが確認されました。1973年当時、テレビのコンテンツは一回放送されればそれでおしまいという意識が強く、ビデオテープも高価だったので、放送が終わるとそのマスターテープに新たに上書きして使われるというケースが普通だったのだそうです。さらに、民生用録画機器もまだ極めて高価であったために視聴者が放送されたものを録画すること自体とてもハードルの高かった時代です。つまり、ほとんどがアーカイブとして残っている映画よりも、この時代にテレビで放映された膨大な数の番組の方がはるかに残存度が低いということなのでしょう。

ともあれ、あれから40年、もう一度観てみたかった作品が無事にデジタル化されたこと、そして、主役を演じたおふたりが今も元気で活躍されているのは嬉しい限りです。

追記〜4/20のCSの再放送で観ました。画質はさすがに良くありませんし、白黒の部分もありました。内容はすっかり失念していて、ショーケンが出ていたことなども全く覚えていませんでした。映画での作りこんだ役と違い、等身大で演じている梶さんが良かったです。梶さんがこんなに笑うシーンは他ではあまりありませんので。

 

 
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