■リマスタリング盤感想
今回のリマスタリング盤で明言できるのは、このCDの音はアナログ盤より遥かにマスターテープの音質に近いということです。
まず、「Warm Front」の方。ボトムが前に出たのでリズム隊がタイトに締まり、さらにハイエンドも伸びているために埋もれていたシェーカーなどのパーカッションがはっきりと聴き取れるようになりました。各楽器の分離が良くなり、ボーカルが前に出たのはやはりデジタルならではの特徴ですが、特に「See
You Again」はボーカルのバリバリした感じ(アナログ盤)が全くなくなり劇的に変わりました。また、ボーナストラックの「通りすぎても」もアナログで気になっていたギターのバリバリとした歪み成分がなくなり、まるでテイクが違うかのようにクリアーに。
「Pretender」の方も同じく耳の前にかかっていたベールを取り除いたように全体的にクリアーになったのは言うまでもありませんが、ドラムのズシッとした重いトーンが引き締まって、太いベースの音も前に出てきた印象。特に劇的な変化を感じるのはラストの「コロシアムの影」で、アナログですごく気になっていた前半部分のSNの悪さが解消し、本来のマスターの音が甦りました。ちなみにアナログ盤では「See
You Again」と「コロシアムの影」はどちらもレコードの一番内周に刻まれた曲。レコードは内周に行けば行くほど音が悪くなるので、CDになると一番音質変化のあるのがレコードの内周にあった曲、つまりA面B面の最後の曲です。
また、何十年かぶりに2つを続けて聴いてみると、この2作品、音の傾向がかなり異なります。「Warm
Front」はいわゆるAOR的なローとハイの上がったミックス。それに対し「Pretender」はどちらかといえばロック的なミドルにレベルの入っているような太い音のミックスです。おそらく後者は重いドラムのトーンに依存している部分が大きいのでしょう。
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