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■「シング・シング〜」のこと 1990年のコンピレーション・アルバム「シング・シング・シング」についてよくお問い合わせをいただくので、当時のことを書いてみます。 このアルバムはコロムビア・レコードから作家が新曲を書き下ろして自ら歌うという企画のオファーを受け、参加したものです。曲はバラード限定で、詞は私自身の好きしてかまわないけれど、アレンジについてはアルバム一枚全曲、一人がアレンジし、極力、生楽器を使うというのがディレクターサイドの方針でした。 私が参加した2曲を英語の詞にした理由は英語の持つ独特の「響き」を重視したかったからです。子供の頃に聴いた洋楽は詞の意味は分からなくても確かに心を揺さぶったものです。そしてそこにはメロディと非常によくマッチした英語のみが持つ美しい響きがありました。本来、ポップスというものは英語圏から発祥したもので、ポップスと英語は切っても切り離せない関係にあります。そこで、中途半端な英語を断片的に入れるよりは、全部英語で行こうと思ったわけです。内容についても2人の作詞家とかなりミーティングをした記憶があります。 面白かったのは、まだ詞が出来ていなかったデモの段階で私が歌ったインチキ英語(笑)の仮歌の単語が何 箇所かそのまま使われていたことでした(こういうケースは割とよくあることなのです)。 曲はStanding in the rainの方は通常の日本のバラードでよく使われるA-B-Cの構成にして、Small beginingsの方は洋楽やジャズのスタンダードのようなA-Bの構成にしてみました。A-B-Cの場合はCのサビで盛り上がるという前提ありきですが、A-Bの場合はAとBはほぼ並列でそれぞれが完結するように作りました。 サウンドは映画音楽の感じが欲しくて大編成のストリングス(8・6・4・4・2=1st violin・2nd violin・viola・cello・contrabass)が使われました。ハープだけは後で入れたくなったために、シンセです。曲の所々でリタルダント (テンポが遅くなる)しているのも、私の指定でした。これはエリック・カルメンあたりからの影響だと思います。
2002/12/29 |
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