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Jul 21,2016

■3つの'Sayonara'

 ンシー梅木(ミヨシ・ウメキ)さんのことについては以前ここで書きましたが、さらに興味深いことが分かりましたので忘れないうちに書き留めておきます。

ナンシー梅木さんは3曲の同名異曲の'Sayonara'を歌っていました。古い順に列記すると以下の通りです。


1)副題は'Let's Say Goodbye'。1953年の新東宝映画「青春ジャズ娘」でナンシー梅木さんが歌っている映像あり。この映画ではコンボバンドのバッキングだが、弦の入っているスタジオ収録バージョンもあり、弦バージョンはベスト盤CD「ザ・アーリー・デイズ・オブ・ナンシー梅木」(ビクター)に収録。東洋的なメロディではなくスロウジャス。作者はTom OliverとStan Saget。出だしの歌詞はSayonara if you don't want my love anymore。冒頭メロディ音声ファイル

2)副題は'The Japanese Farewell Song'。1955年のKay Cee Jonesがオリジナル。Kay Cee Jonesがリリースした際のタイトルは'The Japanese Farewell Song'で、後に'Sayonara'がメインタイトルになったようだ。サム・クックなど複数のシンガーがカバー。1970年代に細野晴臣さんもカバーした。東洋的なアレンジとメロディ。作者にHasegawa YoshidaとFreddy Morganとあるが、Hasegawaの方は偽名の可能性あり。出だしの歌詞はThe time has come for us to say sayonara。冒頭メロディ音声ファイル

3)副題は'Goodbye'。ナンシー梅木さんの出演した1957年のハリウッド映画'Sayonara'の主題歌。ただし、劇中で使われているのはPat Kirbyのバージョンで、ナンシー梅木さんのバージョンではない。ナット・キング・コールがカバー。東洋的なアレンジとメロディ。作者は'White Christmas'を書いたIrving Berlin。出だしの歌詞はSayonara Japanese goodbye。冒頭メロディ音声ファイル

                                
時系列で整理すると、ジャズシンガーであったナンシー梅木さんが1953年に映画「青春ジャズ娘」に出演し、このあたりに1)の'Sayonara'を録音。1955年に渡米し、1956年、米CBSテレビの'Arthur Godfrey show'に出演、話題となり、同年、アルバム'Miyoshi Umeki: Miyoshi Sings for Arthur Godfrey'(下の写真)を米マーキュリーよりリリース。その際、2)の'The Japanese Farewell Song'をカバー。1957年、ハリウッド映画'Sayonara'でスクリーンデビュー、アカデミー助演女優賞獲得。その前後に3)の'Sayonara'を録音したと考えられます。ちなみにナンシー梅木というのは日本での芸名で、渡米して活動拠点をアメリカに移してからは本名のミヨシ・ウメキで活動しています。



 

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