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Aug 4,2016

■シン・ゴジラと初代ゴジラ

 「シン・ゴジラ」を観てきました。結論からいうと、最高傑作との評価の高い初代「ゴジラ」(1954年)と並べても遜色ないのではと思いました。

思えば初代「ゴジラ」はかなり暗く、重く、湿った作品です。まだ戦争の記憶が生々しい時期であり、「お父さんのところへ行くのよ」と死を受け入れる親子、「皆さん、さようなら」と最後まで実況するアナウンサー、死者を弔う賛美歌のような歌のインサート、そして、最後の自己犠牲などを通じて、人間の暗い諦念が心に残るのです。

それに比べ、「シン・ゴジラ」にはそのようなセンチメンタリズムはありません。本当に現代にゴジラが現れたら政府はどのように対応するだろうというリアリティの追及に焦点が絞られています。色恋もなく、友情も淡白に描かれ、人間関係や事の推移が事務的に淡々と進行するのが印象的です。人もたくさん死んでいるはずなのに、そのあたりの悲惨なシーンの描写もないのです。様々な人間ドラマを絡ませるチャンスは何度もあるのに、その切り方は潔いと思えるぐらいです。

ところが、これほどドライに描かれる「シン・ゴジラ」が湿っていないかと言えば、そんなことはありません。徹底的にドライに、リアルに描かれる中で、背後にある種の湿り気を帯びた過剰な何かを感じるのです。この逆説的な表現が「シン・ゴジラ」が心に残る原因のひとつなのかもしれません。そして、そのような表現には初代「ゴジラ」が戦争の記憶を抱えていたように、「シン・ゴジラ」ではあの東日本大震災で経験したトラウマが関わっていることは明白です。

実は2014年のハリウッド版「ゴジラ」は全然違うよと思ってました。これはもう一度観たいゴジラ映画です。



 

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