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 Apr 10,2017

■「嵐を呼ぶ男」考

 原裕次郎さん主演の日活映画「嵐を呼ぶ男」(1957年)は当時の日本の音楽的流行を切り取った記録として観ると相当興味深いものがあります。

ミュージシャンも多数出演しており、最初の平尾昌章(昌晃)さんのステージシーンは流行がジャズからロカビリーへと変わっていく前夜を反映したものだと思われます。「おいらは銀座のジャズ小僧〜」とリトル・リチャード風に歌われるその歌をジャズと呼ぶには無理がありますが、これは洋楽が全てジャズと呼ばれていたこの時代ならではの感覚です。ノークレジットながらドラマーであったフランキー堺さんが一瞬だけ出ていて「タイコなんてバカしか叩かないんだから」と言うセリフも洒落ています(同年のフランキーさん主演「幕末太陽傳」に裕次郎さんが出演したことへのお返しという意味もあったのでしょうか)。

ドラム合戦のシーンでは相手方のバンドのベースは渡辺晋さん(渡辺プロ創設者)で、渡辺さんは1958年にミュージシャンを引退したということなので貴重な映像かもしれません。サックスは松本英彦さん。最後のフルオケのシーンでのドラムは、この映画のドラム演奏のアテレコをやった白木秀雄さんで、下写真のドラムキットを使用しているようです。また、同シーンの中段左から5人目のサックス奏者はクレイジーキャッツの安田伸さん(芸大出身の安田さんが後にコントでなべおさみさんと組んでヤスダー!と怒鳴られていたのも時代の趨勢だったのでしょうか)。

私事ですが、1990年前後にこの映画で石原さんの敵役チャーリー桜田を演じた笈田敏夫さんと同席したことがあり、その時にこの映画を観ていたら、色々とお聞きしたいこともあったのにと今になって思います。

 

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