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 Jun 19,2017

■「タペストリー」が残したもの

 日、久々に「タペストリー」(1971年)を通して聴いて、ほとんど全曲、歌えてしまうことに驚きました。歌詞も断片ながら覚えている部分も少なくありません。'mellow as the month of May'なんていうフレーズ、何てきれいな響きだろうと当時も今も感じます。そして、このアルバムが日本のいわゆるニューミュージックに与えた影響は絶大だったのだなと思いました。

例えば、メージャーセブンスというコードがあるのですが、Cキーだったら普通のCコード(ド・ミ・ソ)に7番目の音シを加えて、ド・ミ・ソ・シという和音がCメージャセブンスです。どういう響きになるかといえば、通常のCよりも浮遊感というか、あいまいな感じというか、ジャズっぽいクレバーな感じというか、中間色の心地良さが加わるわけです。このメージャーセブンスやメジャーナインス、私も当たり前のように使うわけですが、これ一体どのあたりから来ていたんだろうと考えた時に、ああ「タペストリー」だったと改めて思ったわけです。今、聴くとこんなにメージャーセブンスがたくさん出てきたっけと思うほど使われています。もうひとつは分数コード。Cのトニックに対してドミナントコードはGになりますが、ここで原色のGコードに行かないで、左手のベースはGで右手はFアドナインスとかに行くと少々広がりのある感じになるわけです。これが分数コードで、G分のFアドナイスとかFアドナインスオンGなどと呼びます。もっと広がらせようと思ったら分子のコードにさらにテンションを入れるというわけです。

ちょっと'So Far Away'風をメジャーセブンスや分数コードなしに弾いたものと、全部ありで弾いたものを作ってみました。1がテンションとか何もなし、2がメージャーナインス、分数コード、テンションなど全部乗せです。

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改めて聴いてみると、2はユーミンのバッキングトラックみたいですよね?

ちなみにユーミンのアルバムの特に初期の作品なども「タペストリー」の影響をすごく感じますが、いわゆる日本のニューミュージックの黎明期を俯瞰した時に分かりやすいお手本だったのはビートルズよりもソフトで日本人の感性に近かったキャロル・キングやロジャー・ニコルスのようなジャンルの人たちではなかったのかと思うのです。

 

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