■TEXT

 Jul 10,2017

■スケルトンの戦闘機

 のタイトルを見て日本画に造詣のある人なら川端龍子のあの絵かと分かるかもしれません。その龍子(りゅうし)の企画展があるというので、猛暑の中、山種美術館へ行ってきました。

実物をぜひ観たかったその戦闘機の絵は「香炉峰」というタイトルで、思っていた大きさの5倍ぐらいの巨大な絵でした。その迫力には圧倒されましたが、ずっと観ていると何かこの絵、ユーモラスな感じもするのです。戦争画に不可欠のある種の方向に過度のバイアスのかかった感じも、悲壮感のようなものも感じられないのは、まだ日米戦が始まる前だからでしょうか。

今回、観た中でタイトルや説明を見る前に無条件で惹かれたのは、これも偶然、戦争画でしたが「爆弾散華」という作品。一見すると普通に植物を描いた日本画ですが、バックに金を散らしてあって、その淡い色彩の中に動きがあり、凄みのようなものがうかがわれます。説明を見ると、終戦直前に龍子の庭に落とされた爆弾によって畑の作物が吹き飛ばされた図がモチーフとのこと。遠くから観るとこの植物が天に昇っていく天女のようにも見えました。鳥肌です。

川端龍子展、やはり絵の迫力にふさわしい猛暑の季節に観るのが良いかもしれません。


 

■■■■■■■■ kishi masayuki on the web


<<   TEXT MENU   >>

HOME