■ジャングル・ブギー
我々の世代で笠置シヅ子といえば、クレンザーのテレビCMに出ていた関西弁のおばちゃんというイメージですが、戦後間もない時代は美空ひばり登場以前のスーパースターだったようです。当時、エンタメの中心的な存在であった映画にも何本が出演しており、その中の一本が黒澤明監督の「酔いどれ天使」(1948年)。「ジャングル・ブギー」は劇中歌で、そのシーンで笠置シヅ子が登場します。
このシーンでの登場人物は肺を病んでいるやくざの三船敏郎とその情婦の小暮実千代など。笠置シヅ子が歌うダンスフロアでみんながダンスをするのですが、なにか表情や動きがいかにもとってつけたようで様子がおかしいのです。
酔った三船のセリフやダンスもなにかしっくりとこないし、小暮の表情もこわばっている感じ。一番気になるのは笠置が歌の途中「骨の溶けるような」の歌詞の部分で一瞬、素になるような表情をするのですよ。この部分、元は「腰の抜けるような」という歌詞だったそうで、これを笠置が拒否し、作詞の黒澤監督が書き変えたということで、それが表情に出ているのでしょうか。ちなみに私はユーミンの「真夏の夜の夢」(1993年)の「骨まで溶けるよな」の歌詞やシチュエイションはここから来てると踏んでいますが。
それにしてもこのシーン、中毒性があります。特に目を惹くのは歌がインサートしてきて、カメラが笠置にズームするシーンで、笠置が歌に入る前にすごく変な動きをするのです。もうそれが気になって気になって(笑)。機会があれば、どうぞこの部分、よく観て下さい。
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