■1970年フォーク雑感
これまで断片的に観たことはあった1970年の中津川フォークジャンボリーの映像。その長尺ものを観ました。
どうしても気になってしまうのは、野外ステージに無謀にも高価なノイマンのマイクをこれでもかとばかり立てている点ですが、まとめて聴くと、なるほど、当時のフォークの特徴がよくわかります。まずは、学生運動などの時代を背景に、反体制や戦争反対の歌詞の多いこと。そのような歌詞を中心に展開していく種類の音楽なので、メロディは2の次で、まるでお経のようなメロも少なくありません。エンタメというよりはアジテートと言っても良く、今でいえば、ラップに近い感じです。おそらく、シンガーたちのライフスタイルも政治的なものと深く関わっていたのかもしれません。
前年のウッドストックの影響は如実で、遠藤賢司の演奏スタイルはリッチー・ヘブンスの「フリーダム」との共通点がありますし、この時代に新宿駅西口広場あたりで流行したシングアウトやフーテナニーの香りも感じます。
驚くのは、とにかく多くの曲でメロディがほとんどないこと。極端にいえば、3度とか5度の音がただダダダダと連なっている感じ。逆にメロディがあると軟弱で商業的な音楽だと帰れコールでも起きそうな気配。出演者も観客もとんがっている時代。ソロの人だと、詞だけがあって、あとはギターの数個のコードに合わせてその場でメロディを作っている感じです。メロディがあっても数個のコードで足りる極めて単純なもので、転調とかテンションとかまるで関係のない別の世界の話のよう。
そういう意味では、この界隈でメロディーを持って出てきた吉田拓郎さんは画期的だったのでしょう(拓郎さんはこの次の年のジャンボリーに出演しているようです)。そして、拓郎さんが商業的にも成功したところで岡林から拓郎という流れができ、フォークというジャンルの本質も変わったのだと思います。
|