■ルーフトップの絵
2021年にビートルズの映像作品「ゲット・バック」がハイレゾで公開されてから、昔の映画「レット・イット・ビー」では収録されていなかった様々な見たことのない映像が出てきたわけですが、この作品のクライマックスはやはりルーフトップで行われたライブでしょう。
そのルーフトップのシーンで、以前から気になっていたことがありました。それはリンゴのドラムキットの背後に黒地に赤い星のようなものが描かれている絵が置かれていることです。
調べてみると、これはイギリスのジュライというバンドのトム・ニューマンという人が書いた絵とのこと(ジュライにはL.S.Bumble
Beeのピーター・クックも在籍)。ニューマンがビートルズに売り込もうとこの絵を持ってアップルビルの周辺をうろうろしていたのが、たまたまルーフトップライブの撮影日。さらに偶然は続き、機材を搬入していたスタッフに知り合いを見つけ、運よくビルの中に入れ、ルーフトップに上り、この絵を置いたのだそう。ちなみにニューマンはこのライブを実際に観た幸運な観客のひとりで、その姿もフィルムに収められているとのこと(2枚目の写真の矢印の人がおそらくニューマン)。ニューマンはこの後、マイク・オールドフィールドの「チューブラ・ベルズ」のプロデューサーのひとりとして名を連ねることになります。ちなみにマイク・オールドフィールドは現在ポールが所有するEMIスタジオのメロトロンの前所有者です。このようにビートルズをとりまく登場人物がどこかで繋がっていくイギリスの音楽界は案外狭い世界なのかもしれません。
そういえば、私の知り合いの父上は当時、サヴィルロウのこの界隈に偶然いて、このルーフトップライブの生音を聴いているそう。この音を生で聴いた日本人はそうそういないと思われ。
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