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 Dec 21,2024

■コーラスアレンジ

 私より世代がひとつ前の作曲家は、編曲まで手掛ける人が多かったように思います。

例えば、筒美京平さんも林哲司さんもスコアが書けるし、その活動初期には編曲だけで参加している曲もありました。それが、私の世代になると、作曲は作曲、編曲は編曲と分業化されるようになり、多くの名アレンジャーも登場しました。

私はと言えば、自分の提供した曲に対して、その初期にはせめて声というパートまでは関わろうと、コーラスアレンジまでは依頼があればやっていたのです。歌う人が男性だった場合には、頼まれれば仮歌を入れたこともありました。

ただし、コーラスアレンジの譜面を書いて、横浜から決して近くはない都内のスタジオに出向いてコーラスをダビングするという作業、思いのほか、体力的に疲れるんですよ。歌うという作業は肉体労働ですから、1曲仕上げると本当にぐったりしてしまうのです。当時のスタジオコーラスの人はそんな仕事を一日に何本もこなしていたので笑うと思いますが、私はもうその頃、歌うという作業から半ば身を引いていたので、そのモードを切り替えるのに時間がかかるんですよね。また、次の作曲の仕事の締め切りも差し迫っていて、前の仕事は早く忘れたいのに、すでに提出した曲を繰り返し何度も聴きたくないという気持ちもあり、次第にこの作業から遠のいていったというわけです。

(ちなみにコーラスダビングの際に使ったマイクはほとんどがノイマンU87でしたが、最近、このU87のにせものがあるらしいです。外観はほとんど見分けがつかないほど精巧にできているとのこと。購入したい人は気をつけましょう)


 

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