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■答えのないもの 思えば自分が音楽を作る時には、元々完成形が頭にあるわけではなく、出口の見えない暗い迷路のような場所でようやく何かの手がかりを見つけて、これでどうでしょうと差し出すわけで、それが果たして正解かどうかなどは自分でも分からないのです。 ヒットメーカーなどと呼ばれる人々は経験則から導き出したひとつの手がかりのようなものはあっても、たどり着いたその作品が「たまたま」多くの人の共感を呼んだということで、そこにはヒットに至った明確な理由はないと思うのです。ゆえにレコード会社がものすごい予算を割いて売り出した人がそれほど売れなかったり、また、その逆もあるというわけです。よく考えてみれば、受け手もなぜその作品が好きなのかの理由はよく分かりません。ただ、送り手が仮にたどり着いた世界が多数の受け手のなにかと共鳴したということなのだと思います。 このような仕事とは、例えば、200キロのスピードの出る車を開発するとか、1時間で効果の現れる即効性のある薬を発明するというようなはっきりとしたゴールはなく、うつろいやすい受け手の評価の中でふわふわと浮かんでいる不確かなものに過ぎません。 例えば、カラオケの点数表示。アミューズメントとしては面白いのですが、あれは人の歌をタイミングと音程があっているかどうかという基準での判断に過ぎず、高得点を出した人が優れたヴォーカルかといえばそんなことはありません。おそらく優れたヴォーカルというのはそのような数値でははずれているピッチの微妙なずれだったり、タイミングだったり、またはそれ以外の未知のファクターが加わるのだと思います。そして、それを聴く受け手もそのヴォーカルに感動する本当の理由はよく分からないのではないのでしょうか。
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